きもの日本の取組

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きもの着付実習授業支援

近年の生活様式の変化などにより、現代では、「きもの」の着用機会が減少し、その着方さえわからない人達が多くなってきています。

当財団では、高校生、大学生を中心に、きものやゆかたを体験することにより、和文化の楽しさを実感していただき、日本文化への関心を高め、今後の国際人としても役に立つよう、きもの及び小物のレンタル、着付講師の派遣など「きもの着付実習授業」の支援を行っております。

嵯峨野高等学校での実習授業風景

花園高等学校での実習授業風景

自分できものを着てみよう

高橋先生

国際化時代にこそ日本の伝統文化を学んでほしい
大阪国際大学 人間科学部 国際コミニュケーション学科
高橋先生

日本の伝統文化を英語で話す

ここ大阪国際大学守口キャンパス(大阪府守口市)では、学生にとても人気の高い授業があります。
それは人間科学部国際コミニュケーション学科の「国際社会と日本文化II」、日本の文化を英語で話せるようになることを目的として5年前に創設された科目(創設当初の科目名は「コミニュケーション事例研究IX」)です。
授業の内容は「国際人とは?」に始まり、「和室での合理的な動き方」「新暦と旧暦のしくみ」「茶室でのお茶会体験」「温故知新の風呂敷利用術」など多彩。語学は学べど、自国の文化を知らない若者たちにとって実に興味深いものばかりです。もちろん「きもの」に関する講義・実習も。
「実際の体験や実習を通し、肌で感じて吸収してほしい」と同学科の担当者、講師の高橋尚美先生は、平常授業とは別に着つけの実習授業を、土曜日に振り替えて行っています。
現在20人程度の2クラス編成、留学生はもちろん男子学生もいるそうで、「ゆかた」と「きもの」の着つけを学びます。定員数を超す履修登録希望者にうれしい悲鳴を上げながら、だからこそ厳しい単位認定の姿勢を貫く高橋先生。そして、自分自身が生きた日本文化の教材になればと、いつもきものを着て教壇に立つとのこと。
「母が残してくれたたくさんのきもの、私に最もふさわしい活用方法です」とにっこり。

伝えたい想いと夢

高校の英語の教師だった高橋先生は、茶道を5歳から始め18歳から自宅で教えていました。
しかし、教職が忙しくなり茶道を思うようにできなくなった彼女、「なんとか、大好きな茶道と教職をリンクさせることはできないだろうか」と考えました。そんな折、参加した茶道裏千家の国際セミナーにおいて、その答えの糸口を発見することができたのです。
「お茶の道具ひとつひとつやその所作、精神性を英語で表現する難しさと意味深さ‥。あ、これだ!」と。
高橋先生の見い出した「やりたいこと、やるべきこと」に、理解を示してくれたのが大阪国際大学だったという経緯を伺う中、その道程にかけた熱意には計り知れないものを感じます。
学科や専門分野を縦割りに区切るという概念の中、「それらを統合した新たなカテゴリ」を受け入れること自体、一般にはなかなか難しかったであろうと想像いたします。
「西洋様式の中で暮らす現代において、若い人が日本の伝統文化を知る機会が少なくなったのは仕方のないこと。でも真の国際交流社会に生きる人間を目指すなら語学だけではなく、それら(日本の伝統文化)を知って愛着を持ち、広く世界や後世に伝えていくことが必要。すでに教育現場においてそれを行うべき時代がきていると思います。」と高橋先生。

さらなる時代に向けて

他所の国に留学し、自国の文化についてなにも英語で話せなかったことに「恥かしさ」を感じたという学生たちが、高橋先生の授業を受けて生まれた国に対する自信と誇りを身に付けつつあり、またなにかを感じ取り、大学の授業にきものを着て来るようになった学生もいると聞きました。
「伝統文化を知ることは自らをも磨くこと。命や心を繋げていくことの意識にも結びつくのです。」
高橋先生が10年前に想起した理念が、はっきりとした姿形を表し確実に認知され始めました。
そんな彼女の夢はまだまだ広がります。
「せっかく学び始めた『日本の伝統文化』、たった1年の授業じゃ短すぎるしまだまだ入り口程度。もっと深く、国際社会に身を置き自分の尊厳を持つためにもそれに携わる機会を持ってほしい。そんな若い人たちの手助けをしていけたら‥。」と高橋先生。
世界のあちらこちら、「きも のを身にまとい茶道をたしなみ日本文化を英語で語る」、そんな同校卒業生の評判を聞く日は、そう遠くないでしょう。

きもの着つけ実習

12月6日(土)、学内和室の研修会館できもの着つけ実習の授業が行われました。
講師は高橋先生と京都の着付学院のベテラン講師たち。
この日の参加学生は女子18人、男子3人、主に2回生(うち4回生5人)です。
授業開始は午後2時から、公益財団法人京都和装産業振興財団からレンタルしたきものと小物一式は事前にセットで用意されています。
これらも学生たちの手によって行われたとか、高橋先生の授業には強い参加の姿勢が 必要なようです。

和室に正座で座り神妙な面持ちの学生たち、まずは紹介された講師の先生たちに対し、手をついて挨拶することに始まりました。
次は小物のチェック。腰紐、襟芯、伊達締め‥、高橋先生が黒板に名称を書いて行きます。戸惑うことなくひとつひとつを確認。どうやら予備知識を学んだようです。
続くは講師の先生のデモンストレーション、長襦袢姿からきもの、帯結び(半幅帯の花文庫結び)までを目の前で見て学びます。真剣な眼差し、私語もなくみんな一生懸命。

西陣きもの学院講師のデモンストレーション

▲ 着付講師によるデモンストレーション

さらには今回、学生をモデルに「男子の着つけのデモンストレーション」を見せてもらいました。
滅多に見ることがない男性きものの着つけ手順、「お父さんや彼氏に着せてあげられるといいよねー」と、気さくなトーク炸裂の高橋先生。
そしていよいよ自分で着てみることになりました。男子学生は仕切りをした別の部屋へ。

男子学生がモデルになった着つけのデモンストレーション

▲ 男子学生がモデルになった
着つけのデモンストレーション

足袋は上手く履けるでしょうか?履く時に、どうしても行儀が悪くなってしまうようでしたがまずはクリア。
二部式の長襦袢は襟の抜き加減が難しいです。裾よけも意外と厄介?
きものはまず、片手で持って腰から肩へ滑らすようにして羽織ります。腰紐を結ぶ手さばきは、今まで経験したことがない所業。きものを着慣れている人が「手」と「身体」で覚えている自然の流れや手技、普段洋服しか着ていない学生たちは、なんと大変なことと思ったでしょう。襦袢ときものの襟を合わせ直し、おはしょりの処理をするころにはみんな汗びっしょり、伊達締めの段階では襟元がすっかり崩れてしまっている学生もいました。

腰紐も結ぶ

▲ 腰紐も結ぶ

しかし、「鏡」は一切無し!友達同士横目で見ながら確認しつつの大格闘。高橋先生や講師の先生方はみんなの間をクルクルと回ってアドバイスをしたり、ポイントを直したりと大忙しでした。
最大関門、帯結びにも真剣に挑みます。花文庫結びを可愛く仕上げるのは至難の技、前で結んで後ろにぐるり。
悪戦苦闘の甲斐あって、みんな自分できものを着ることができました。

伊達締めを締める

▲ 伊達締めを締める

友達同士、顔を見合わせて誉めあう姿に「日本女性だなぁ、美しい!」という感想を抱きます。
少し早めに完成した男子学生の羽織・袴姿にも、「格好ええんちゃうのー」と忌憚ない誉め言葉。自分たちが日本人であることの素晴らしさと喜びを、また、留学生は日本の民族衣装である「きもの」に日本人のなにかを学んだ一幕でした。
指導に従いきものを畳み終え、充実のきもの着つけ実習授業が終わりました。

着つけ終わった直後

▲ 着つけ終わった直後

「とても楽しかった」「もっと着ていたかった」「きものを着る機会をいっぱい作りたい」「きもの姿で街に出掛けたい」と学生たち。ポケットカメラや携帯カメラで互いに写真を撮り合う姿に、新たな世代が慈しむべき伝統文化の素晴らしさを感じました。

その後の記念撮影

▲ その後の記念撮影