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第九回 きものの世界っておもしろい

京都工芸染匠協同組合青年部

京友禅手描染加工において、キモノづくりのソフト面から作品創作全般を統括する、プロデューサー的役割を果たす工芸染匠の若手(45歳まで)で構成されている協同組合。
・西山 岳志さん:京都工芸染匠協同組合青年部幹事 (株)に志山染匠
・小谷 耕平さん:京都工芸染匠協同組合青年部幹事長 (株)小太仁
・川村 瑞穂さん:京都工芸染匠協同組合青年部副幹事長 (株)雅染匠

京友禅を広く世界に「温故知新」

京友禅と言えばだれもが伝統美を表現したきものを想像するが、「温故知新」実行委員会が発表した作品はその既成概念も覆すものだった。
ドレス、またソファやロールカーテン、パーティションなどのインテリア用品、そのどれもがかなりの高感度で創作されている。例えば、桜の柄を染め上げた友禅正絹生地と、フォルムを美しく出すことができるシルクシャンタン(タイシルク)が見事に調和されたワンショルダーロングドレス、また、能衣装用の麻素材にぼかしや金彩友禅をあしらったロールカーテンなど、従来の和装業界発の異分野商品とは違った趣にあふれている。わかりやすく言えばとにかく「おしゃれ」なのだ。
「"洋風シーンにも合う"をコンセプトに、和テイストに縛られることなく、東洋のエッセンスを表現したかった」と語る同メンバー幹事の西山さん、目標は「京友禅を世界に!」、ポジティブな姿勢に頼もしさを感じる。


コラボレーションの成果、2年目の展開は

3月の発表までにかかった準備期間は約1年、デザイン、企画に始まり制作まで関わった人たちの力は甚大だったという。「温故知新」実行委員会メンバーは約30人、中心となる工芸染匠だけでなく、様々な専門分野の技術をコラボレーションさせることができたのは、やはりそれぞれの広い人脈があってこそ。4つのグループに別れ情報交換しつつ、各グループがモノづくりに励んだという経緯をふまえ、幹事長の小谷さん、副幹事長の川村さんは、「1年目は企画・制作の年でした。2年目からはこれらをいかに売っていくかが大きな課題、どのような販売チャンネルを開拓し、どのようにセールスプロモーションしていくかが勝負です」と決意(?)表明。行政サポートありきの事業の場合、とかく単年度事業として終わってしまう現状に喝を入れてくれた。
2年目のプロジェクト名は「温故創新」、メンバー自らの奮起を感じるネーミングである。


広げたい発表の場

「温故知新」創作展は、2004年の3月に四条京町家で行われ好評を博した。また、東京の東武池袋店内の西陣織工業組合「きぬおり千年」等でも展開、実際販売に結びついた。
メンバーが望むのは、"今までのカテゴリー(和装)以外の幅広い層にも見てもらいたい"ということだ。新しいターゲットを創出していく手段は、発表の場を従来の枠にとらわれることなく広げて行くことに尽きるだろう。洋装、ブライダル、インテリア、店舗、住宅、通販‥、「温故知新」の作品(商品)には、カテゴリを選ばない自由さがある。また、今後の展開次第ではコストダウンも図れ、さらなる需要層を見つけることもできるだろう。
アンテナを張り巡らし新しいチャンネルをキャッチするべく、主導型プロデュサー集団のスキルを際立たせてもらいたい。
伝統技術をベースにした新しい試みが行われつつある現在、付加価値の創造にも大きな期待が寄せられている。それは、"無形のノウハウ"という"宝物"なのかもしれない。

[京友禅ソファー]
日本の伝統意匠である「琳派」をモチーフに、京友禅の手描き技術をシンプルなソファーに表現しました。

■制作
吉川和志 渡辺朗 中川和久 渡辺賢太郎 岡崎摩紀
制作協力: CUBIC CREAM PRODUCED BY TETRA CO.,LTD

[手描友禅ドレス]
桜をイメージした手描友禅正絹生地と、シルクシャンタンを合わせてイブニングドレスに仕立てました。

■制作
川村瑞穂 吉川博也 高橋良明 高杉尚樹
制作協力: 高位真理

[OBJ★Kimono]
漆の艶やかな深い黒と、友禅の組み合わせではんなりとした白とのコラボレートを本物の加工で表現。

■制作
吉川博也
制作協力: 東端 唯

[和製ロールカーテン]
能衣装(麻100%)の一つである水衣(みずころも)という素材を用いて、引き染めぼかしと金彩の技法をあしらいました。

■制作
小谷耕平 川勝一範 藤原秀樹 古島正勝

[パーテーション]
「洋の空間にマッチする」というコンセプトのもと、「和」のイメージを大切に南洋の桜の木を使用し創作しました。

■制作
鈴木浩介 有清史一 吉川博也 高橋良明