わが国における養蚕・製糸の始まりは、弥生時代以来、幼稚ながらも養蚕法が行われ、その繰糸法も染色法も、また製織法も知られ、絹織物が早くからあったといわれる。
2~3世紀頃に中国から養蚕技術が伝わり、秦人、漢人の帰化によって養蚕・製織の技術は他の工芸や学問と共に急速に発達を遂げた。歴代天皇の奨励もあずかって、生糸、絹織物は広く民間に普及し、全国各地に伝統ある各種絹織物を産み出していった。江戸時代中頃、はじめて生糸、絹織物の商品化が行われ、年1回春蚕であったのが夏蚕・秋蚕が加わり、技術改良が盛んになった。
明治時代に入って、タール系染料による洋式染色法や洋式力織機および撚糸機が輸入され、政府の保護政策と相まって、絹織物工業は著しい発展期を迎えた。一時は生糸が全貿易輸出の二〇%を占めるなど、わが国産業の発展に大きな貢献をした。