平 箔 金銀糸

〈伝統的な金銀糸・平箔の生産工程〉 金銀糸専用に漉かれ、目止めされた上質の和紙の表面を鏡面に仕上げ、地漆が引かれ、約1週間乾燥させる。さらに金銀箔を接着させるための本漆が薄く引かれる。その上に純金箔を1枚ずつ丁寧に竹ばさみで隙間なく張り合わせていく。出来上がった平箔は切断工程に送られ、カットされる。
手織り工程では、耳を付けたまま切断された平箔を1枚八つに切り離し、2枚分を合わせて木綿布で包み、濡れタオルを当てて湿らせておく。天井から垂らされた芯糸の先端を錘に巻き付け、切断された細い平箔を一筋ごとにあてがい、芯糸に撚り をかけていく。芯糸に撚りをかけると同時に左手を箔に添わせて上げていくのである。一筋撚れ上がるごとに、芯糸にかかった余分な撚りを戻し、新しい箔を継ぎ足 していく。一定の長さに撚り上がった部分を錘に巻き取り、さらに錘に巻き取られた金糸を小枠に巻き取り、板掛けが行われる。

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金銀糸

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平 箔

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模様箔

 

〈真空蒸着法〉 戦後、1956年頃から基盤であるフィルムや紙に、金属を加熱蒸発させて付着させ、金属の薄い皮膜を作る真空蒸着というハイテク技術が、金銀糸業界に応用されるようになった。
真空蒸着法による金銀箔の基本形は、ポリエステル系のフィルムに純金・プラチナ・銀、あるいはアルミ等を蒸着し、さらに和紙あるいはフィルムを張り合わせる。この、アルミまたは銀を蒸着するフィルムが、無色透明であれば銀箔、オレンジ系の着色コートであれば金色になるわけである。
真空蒸着に使われるポリエステル系のフィルムは、通常、63センチ幅のものが使用される。送られてきたフィルムの片面に、染料が混入された樹脂コート溶液がローラーによって塗布される。着色が完了したフィルムは、摂氏200度の高温ドームを通過しながら、乾燥され巻き取られる。


 

〈金銀糸の撚糸〉 撚糸機械を使って行う金銀糸の撚糸は、金銀箔の巻かれたボビンの中心に、芯糸を通して、ボビンに回転を加え、芯糸を巻き取っていく。そうすると、金銀箔は必然的に芯糸に巻き付いていく。
〈低速撚糸機〉 1錘で、1日約800mから1,000mの金銀糸の撚糸加工が可能である。撚糸が終了した金銀糸は、ボビンから木枠に巻き取られ、1,000mまたは2,000mの長さに揃えられ、仕上げ工程に送られる。綛上げ枠に巻かれた金銀糸は蒸気炉に入れられ、40℃から96℃の蒸気で熱処理される。続いて約60℃の乾燥炉に入れて、余分な水分を取り除く。乾燥された金銀糸は、一束ごとにキビロ糸で結束され、枠からはずされて完成品となる。
〈高速撚糸機〉 真空蒸着、マイクロスリッターによって量産される金銀箔を撚糸加工するのに活用される。撚糸加工の仕組みは、低速撚糸機と全く変わりがないが、文字通り高速回転が可能なので、1錘で1日、4,000mから5,000mもの撚糸加工ができる。