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エッセイ

慣習の中に礼あり 09.07.10

先月、葬儀や法事が相次ぎました。長いつき合いの友人のお父様の急な逝去で、驚きながらも急ぎ、お通夜の参列の準備を考えなければなりません。まだ袷の季節。グレーの色無地一ツ紋に黒共帯で「半喪(はんも)」の装いで向かいました。
早めに到着しましたが、すでに多くの方々が並んでおられます。さすが、京都の老舗といわれるところの葬儀に、参列者には半喪の装いの方もたくさんお見かけしました。ベージュ系の色無地、薄紫の色無地等々。いずれもちりめん地であることは、遠目でもわかります。二越(ふたこし)、三越(みこし)のそれらは重みがあり、裾も安っぽくひらひらすることなく、身にしっとりと馴染む落ち着きが感じられます。故人に対する哀しみの中にも、きりっとした礼が表されていました。こういう場面が、ほんまもんの京都やなあと思う瞬間です。きもの文化は単なるファッションではなく、相手に対して礼を尽くすという気持ちを儀式の中で自然と伝えることができる装いだと再認識させられました。
さて、お若い方には「半喪ってなに?」と思われるでしょう。昨今はそれなりの年齢の方でもご存じない方が増えてきました。残念に思いますが、それでも京都という地域性はまだまだきもの文化が“生きて”いるところです。そういうことを、今回のお葬式にも感じられ、きちんとした「心得」をもった方々がまだまだおられることに安堵します。
しかし私はいま、東京で書道教室を開き、その合間に着付け教室も依頼されて若い女性を中心に指導していますが、そこではきもの文化だけでなく、暮らしの文化、慣習も通用しないことが多すぎて驚きます。それはどうも若いという理由だけではないようです。当然、そんな彼女たちに「半喪」という言葉を使うと、やはり「???」という表情でした。
お通夜というのは“不幸ごと”です。急に訃報を聞いてかけつける儀式に、完全装備の喪服で伺うと、まるで亡くなられるのを準備して待っていたようにとらえられます。ですからお通夜の「喪儀(そうぎ)」には半喪という少し色のあるきもので“とりあえず”感を表現し、そして葬式である「葬儀(そうぎ)」にはすべて真っ黒の服装で臨むのが正式です。最近は洋装が多いので、お通夜も葬式も黒の礼服で参列する方が多いのですが、和装の場合はそのあたりをきちんと分けるべきです。
亡くなられたことに驚き、悲しみながらも急ぎかけつけたことを半喪の装いで表し、葬儀ではきちんと心整えて、黒の喪服で伺うというのがきもの文化においての悲しみの習わしなのです。
また先日は私の両親の七回忌法要を無事終えました。ようやく自分なりに心の整理がつき、奮起してのことです。すでに半喪を通り過ぎ、さらに元気を出すためにも、もう少し軽い装いとしてお気に入りの薄いグレー地の一ツ紋単衣にグレーの塩瀬の帯を。この帯は春蘭の墨描きしたものです。娘にはこの日のために新調したサフラン染めの鮮やかな染め描き一ツ紋の単衣に黒共帯を合わせ、改めて祖父母に対しての感謝の気持ちと、孫の成長過程を見守ることなく他界した悲しみを表しました。法要後は、精進おとしを兼ねた会食のひとときを馴染みのホテルで過ごし、私自身も元気であることを両親に報告できたと思います。
きものは結婚式など冠婚の場面では意識されることが多いのですが、このように葬祭の場面でも日本(人)の慎ましやかな心、相手を気遣う慣習を伝えられる素晴らしい文化であることをもっと伝えなければ、と考える出来事でした。
お通夜に半喪の装い。
この袷は着やすくて私の大のお気に入り。帯次第で哀しみごとにも、喜びごとにも使えます。
袷の地柄のアップ
法事のときのグレーの一ツ紋単衣。
帯は私が習っていた水墨画の先生による直描きしていただいた思い出のもの。
法事のときにちょっとはおった私のオリジナル
「ちりよけ」。
これは羽織の袖を切って、東京など人混みで帯や着物が汚れないようにとリフォーム?してもらったもの。気楽な「ちりよけ」代わりにとても便利です。
サフラン染めの一ツ紋単衣。
色無地の単衣は若い方でも一枚あつらえておくと何かと重宝しますよ。
書「慣習」。
普段の雰囲気を少し変えて、厳格さをかもしだしてみました。
 
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