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エッセイ

真夏のきもの 京都・西陣織の匠の技 08.08.08

真夏の京都は恐ろしく蒸し暑い。そんな中、私は伝統工芸士であった父の手が入った「裏紗(うらしゃ)」の盛夏の薄物を、20代から気楽によく着ていた。
西陣織というと、一般的には“帯の西陣”として知られるが、それだけではない。ネクタイ、金襴、お召、綴などがある。その中の織の着物は、今ではその技術を伝える人が減りつつあるので、これからつくられることも少なくなると思われる。
私がいつも着ている裏紗というのは紺地に、えんじ色の赤の「ウラシマ」だが、写真は、私が父の形見として大事に持っていたものを、東京の生徒さんに反物でプレゼントしたものだ。彼女はお茶の先生で、自分で仕立てられる人なので、差し上げたらすぐに出来上がって目にすることができた。7月に東京教室のお弟子さんたちと開催した、ある送別会に着てこられたのだ。表側は無地で、裏側に矢絣の柄が浮かぶように織られていて、仕立てあがりを着られると、その矢絣が下の白地の紗の長襦袢に映えて、歩くたびに柄が浮かび上がる。なんとおしゃれなことか! 直接、表から柄を現すのではなく、間接的に表現するその智恵に、改めて感動させられる。昔の人のアイデアは、本当にすごい。
着る人のしぐさによって柄が変化し、また(着ている人は正直、暑いのだけれど)見ている人に涼感を与える裏紗。日本人ならではの、京都人ならではの「相手を思いやる気遣い」の精神が織り込まれているように思う。
そして白の絽の帯も、この着物にはぴったりである。真夏のお食事会はまさにこの着物で明るく楽しく、涼やかな雰囲気となった。
そして写真のゲタは、90年、京都で続いた下駄専門店のものだが、残念なことに、今年の8月で閉店となる。私のゲタの鼻緒を長年、つけかえてくれていた人がいなくなる。寂しいことだ。
今後、減りゆく技術で作られた着物を身にまとい、着物文化を通しての日本の文化・技術のほんまもんを肌で感じることも、一つの教養を身につけることではないだろうか。昨今、若い人たちがレンタル着物を着て、京の町を楽しみ、着る喜びを楽しんでいる。一時の和装離れからすれば、喜ばしいことだけれど、匠の智恵による素晴らしい着物の技術や楽しみ方、基礎を、きちんと知っていただくところにまでつなげるのは、やはり今の中高年の役割ではないだろうか。ヘアスタイルや、小物のあしらい、着方など、基本をわかって今風にアレンジを楽しむのはけっこう。でも着物そのものの良さや基本的なことを知らずして、ただ時代に合わせた流行だけで着ているのでは、着物文化は次代へ伝わらないと思う。
日本の文化の一つを身につけるという自覚を持って、出で立ち、振る舞いもやはりきちんと心得てこそ、歴史ある京の町を歩くにふさわしいのではないだろうか。あちこちで着物姿を見かけることは、本当に嬉しいことだけれど、ちょっと厳しい目で見て、きちんと意見することも、時に必要ではないかなと思う。
 
暑い京都だから、京うちわに書画をあしらい、「菁花のオリジナルうちわ」を作成
私が差し上げた紗を自分でおしゃれに仕立てた生徒さんの着物と、間もなく閉店する下駄屋さんの下駄
     
 
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