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きものあそび

牧野茜のきものコーディネート
曾祖母の思い出 2008.08

わたしの育った家では、曾祖母が和裁をたしなんでいました。母は三姉妹で、3人の嫁入り支度は全て曾祖母が仕立てたのだそうです。だから、こうして今、わたしが受け継いで着ているたくさんのきものや帯は、曾祖母の手によるものです。曾祖母、祖母、母、伯母、叔母5人の女性の所有していたきものが、共通して一人の女性の手で仕立てられたということが嬉しく、これが家族のつながりなのだなあとしみじみと感じます。 母の世代はきものを全く着ないので、わたしには存命中の曾祖母がきものを仕立てていたという記憶はほとんどありません。それでも縫い物をよくしていたなあというおぼろげな思い出は浮かんできます。じわじわと思い出すのは、曾祖母の部屋には衣桁が広げてあって普段の洗濯物などを掛けていたこと、部屋の隅にお針箱とくけ台があったこと、陽だまりのなかで背中を丸めて針仕事をしていたことなど。断片的で本当に小さな記憶ばかりだけれど、きものを着るようになった今、やっと、あれは衣桁と呼ぶのか、あれはくけ台だったのかと分かるようになったわけで、亡くなって随分経ちますが、きものが曾祖母との思い出を一つ一つ結び直してくれているかのようにも感じます。

長年探してようやく気に入ったものを見つけ、昨年購入した衣桁です。もちろん、原点は曾祖母の部屋にあった衣桁の記憶。骨董屋さんによくあるものは、漆などがはげていて日常使いに向かないものばかり。これは桑の木の無垢で、サイズも使いやすく本当に重宝しています。

京都に暮らし、新たに仕立てたきものもたくさん増えましたが、どの仕立てもさほどでなく、曾祖母の仕立てたきものの着心地のよさに勝るものに出会いません。ひいおばあちゃんは仕立てが上手だったんだなあと袖を通す度に思い、わたしのために一枚も縫ってもらえなかったことがちょっぴり残念にも感じますが、母たちのきものを通して、ひいおばあちゃんの針仕事を感じることができ、果報者だと感謝しています。
今回紹介する浴衣は、注染で染められたアヤメ模様の木綿の浴衣です。もちろん、仕立てはひいおばあちゃん。京都ではバチ衿が主流ですが、わたしの家(静岡)のきものは長じゅばんも浴衣もすべて広衿仕立てです。この浴衣も広衿で、衿裏には綿晒しがついています。どうもバチ衿が苦手で、浴衣も広衿のほうが着やすいと感じるのは、受け継いだ感覚なのかもしれません。


アヤメの柄の注染の浴衣です。オーソドックスすぎて、これまであまり着ることがなかったのですが、紺の浴衣のよさは年々強く感じるところ。長く大事に着ていきたいと思っています。

合わせた半巾帯は、前柄と手先に絞りの模様が入った麻素材。夏らしくざっくりとした感触で、表の黄色と裏の白の組合せも気に入っています。
     
 
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